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赤ちゃんが二人
 連載第3回

 障がいがある子の母も、ない子の母も、みんなで話して
 “はじめの一歩”を踏み出す場


   子育て支援 親子ひろば「はじめの一歩」、
                  「アトピーの会」(旭川市)

障がいをもつ子どもの親も外へ向かって第一歩を!
JR旭川駅から車で5分ほどの場所にある、旭川市障害者福祉センター「おぴった」。ここで毎週木曜日、「はじめの一歩」という親子の集まりが開かれています。「はじめの一歩」の特徴は、障がいのある子供もない子供も一緒に、分け隔てなく参加できるところ。入会の規則や、難しい決まりはありません。会場となる20畳の和室は清潔で明るく、段差もないので、子供たちも遊びやすそうです。

午前10時を過ぎると次々と親子が集まり、あっという間に会場がにぎわってきました。一人一人をにこやかに迎えるのは、代表の大沢礼子さん。市内にある託児サポート団体のスタッフとして働くかたわら、プライベートな時間を使ってこの活動に尽力しています。「子育ての経験者=支援する側として、子育て中のお母さんたちのニーズにこたえたい。“出来ること”と、“して欲しいこと”をうまくつなげられたら」と積極的にお母さんたちのサポートをしています。

今年で活動4年目を迎えた「はじめの一歩」。そのはじまりは5年前、障がいを持つ子供と親という、一組の親子と出会ったことがきっかけでした。「子育て中の親、特に障がいを持つ子供を育てている親はどうしても内にこもりがち。外の世界に目を向けてはじめの一歩を踏み出すまでが大変なんです。子供だけでなく、親も仲間を求めている。週に一回だけでも集まって話す時間を作ってほしい。そのためのお手伝いをしたいと考えたんです」。


お母さんと遊ぶ子どもたち
遊ぶ子どもたち
子ども同士の関わりも増え、発達面でも良い影響が!
この日、一人のお母さんが取材のために会場に来てくださっていました。彼女は4年前、「はじめの一歩」と大沢さんに出会い、親子共に成長を実感したという、いわば“卒業生”。お子さんは現在7歳で、元気に通学中。お母さん自身も生活のリズムがつき、社会復帰も果たされたそうです。
彼女は生後9ヶ月ころに子供の発育の遅れに気がつき、病院を受診。小頭症の診断を受け、不安な気持ちを抱えながら母子通園センターに通っていた時、知人から「はじめの一歩」の存在を聞き、ワラをもつかむ思いで参加したそうです。「大沢さんに気持ちを聞いてもらい、支えられ、仲間を見つけることもできました。子供同士の関わりも増えて、遅れがちだった発達面でも、大きな影響を受けました」。

また、クリスマスや運動会などのさまざまな行事も魅力があると話します。「行事は誰でも参加できるし、一人ひとりが企画や準備に積極的に参加して、みんなで作り上げるんです。自宅で風船をたくさん膨らませる係とか、なにかしらの役割が自然と決まっている。休日に行なうので、子供が普段どんな環境で生活しているのか、日ごろは忙しい父親に知ってもらう良い機会にもなりました。もちろん父親もサンタに変装したりして、がんばりましたよ」
みんなで決めてみんなで実行というスタイルは、普段から共通のルールのよう。取材当日も、おもちゃの準備や後片付けを、参加している親子みんなで行なっていました。誰に押し付けられることもなく、自分たちで決めて楽しむ。つながりの中に自由があることも、参加する親子にとってはメリットなのでしょう。

障がいの有無に関わらずいっしょに成長!
当初の「はじめの一歩」は、障がいを持つ子供とその親がほとんどでしたが、活動を続けるうちに障がいを持たない親子もたくさん参加するようになってきたそうです。このことに関して前述のお母さんは、「障がいのあるなしに関わらず、子育ての悩みを抱えているのはどの親も一緒。いろんな人が集まってつながっていけること、とても嬉しく思います」。その笑顔から、当初大沢さんが目指した「殻にこもらず、外に出よう。たくさんの人と出会おう」という目標を見事に達成した充実感を感じることができました。

また、興味深いのは、障がいを持たない子供のお母さん達の言葉です。「障がいを持つ子のお母さんとプライベートでもお付き合いするようになったし、こういう環境にいることで、子供も大きくなった時に障がいのある人のことを偏見なく受け入れられるようになると思う」「子供同士、特に意識しないで自然と遊ばせていくうちに、あとで障がいがあることを知って、そうだったんだ!と自分でも驚くほど、自然に受け入れることができていました」との声が、あちらこちらから聞かれました。

また、「はじめの一歩」には月齢の小さなうちから参加できますが、このことに関しては次のような利点があると、あるお母さんは話します。 「月齢、年齢が小さい時は障害のあるなしがはっきりしませんよね。そうするとやっぱり一人で考え込んでしまいがちですが、こういった場所で先輩のお母さんに相談したり、気持ちを外に出すことができるのはとても心強いことなんです」。常に母親達の心に寄り添って話を聞き、助言をくれる代表・大沢さんの存在については、「とても大きな存在」と教えてくれました。
遊ぶ子どもたち”
大沢礼子さんさん
子育て支援とは親支援!
そんな大沢さんは、取材中もたくさんの親子の様子に目を細め、子供をあやしながら、さりげなく母親達の話題に溶け込んで必要なアドバイスをしています。大沢さんにとって子育て支援とは、どのような意味を持つのでしょうか?
「“子育て支援”とは、“親支援”。お母さん達が何を求めているのかを考えていくことが、実際の子育てにもつながっていくと思います。また、口コミで集まってくる親子が多いのですが、ここにきて初めてご近所同士だと気付く場合もある。地域の母親同士で支え合う意識を持つことが大切なので、『お宅の近くに○○さんが住んでいるじゃない。○○さんに相談してごらん、頼んでごらん』というように、橋渡しすることも私の役目だと思っています」

なるほど、大沢さんが母親達に積極的に話しかけて情報を集める目的はそこにあるのでしょう。とはいえ、母親同士のつながり作りを大切に考えながらも、その時自分に向けられたニーズを決してないがしろにはしません。時には、夜、子供を寝かしつけた後で誰かに話を聞いてほしくなって…と電話をかけてくる母親もいるそうです。ご主人の帰りが遅く、一日中子育てに終われる生活に虚無感を感じてのことだろう、と大沢さんは察し、思いを受け止めるといいます。また「子供が風邪をひき、一週間外に出られないでいる」という電話を受けた時には、家での遊びの内容を考えて、一時間かけて訪ねたこともあるといいます。

「みんな本来はしっかり考えて行動できるお母さんなんです。でも、子供と一対一の状況の中では、ほんの些細なことで行き詰ってカッとなってしまうことがある。その怒りやイライラが子供に向かうことはどうしても避けなければなりません。だから私は、私にぶつけていいんだよ、どんな表現でもかまわないから思っていること話しちゃってって、伝えるんです。そんな風に話しているうちに冷静になれる。なぜ自分がこんなに苦しんでいるのか、これからどうしたらいいのか、その人なりの解決策が見えてくるんですよね」こういった信頼関係は、常に気持ちを母親達に傾けてきた大沢さんだからもてるものといえるでしょう。

支援する側が一人で抱え込まないことも大切!
昨今、「いまどきの若い親は…」という言葉をよく耳にします。子育ての先輩達から見ると、少子化・核家族の環境で生活する若い親達が心配で仕方ないのかもしれません。時には「親に任せて置けない。今の親は自分から他人に相談したり、頼んだりなんかできないだろうから」と先手先手で支援の手を差し伸べ、介入しようとする支援者側の動きもあると聞きます。
でもね、と大沢さん。「お母さん達は、私達が余計に心配しなくてもちゃんとできています。だからほんの少し手助けすれば、後は自分達でどうしたらいいか考えて、支え合ってやっていける。実際にそんな風に解決できているケースも見てきました。少し助けてあげて、後は見守るだけで大丈夫な場合だってあるんですよ」
あれもこれもやってあげなければならない、という姿勢ではなく、相手がどんな助けを必要としているのかを見極め、あくまでその母親と子供の主体性を尊重しながら丁寧に関わっている姿勢が伝わってきます。

大沢さんは話します。「私のやっていることは、誰にだってできることなんです。私自身、子育て中にはたくさんの人からサポートしてもらったし、みんながそうやって子育てしてきているわけですから。それに、お母さん達と一緒に泣いて笑って、私自身がすごく力をもらっているんですよ」そんな大沢さんが、子育て支援に力を注ぐなかで、心がけていることがあります。
●相談の内容によっては、専門機関を紹介したり、決して一人で抱え込まないこと。
●対応が難しい状況の場合はそのことを伝えて断るが、時間の空いた時に話を聞いたり、一緒にできることは何かを考える時間をつくる。決してその人を一人にしないこと。
サポートする自分自身が無理をして、相手にうそを言ってしまわないように、常に自然体でいることが大切だと教えてくれました。子育て支援を受けるだけでなく、自分でも誰かを支援したいと考えている方には、大変参考になるお話です。
お母さん達もお話し
「アトピーの会」

偏見を受けて家にこもりがちに・・・でもこの会でホッとできた!
「はじめの一歩」の参加者のなかに、アトピーやアレルギーの悩みを持つお母さん達がいます。このグループ「アトピーの会」は、共に子供のアトピーやアレルギーで悩んでいた親子達が5年前、病院などで知り合って結成。現在は「はじめの一歩」に参加しながら、月一回「特にこの日はみんなで集ろう!」と声をかけて、互いに話す機会を持っているといいます。経験者にしか分からない子供の症状、アレルギー児の除去食の工夫や病院の情報など、それぞれの持っている情報を交換する貴重な場となっています。この日の参加は9組の親子。子供の成長に伴い、メンバーが変わりながらも、常に新しい仲間を迎えているそうです。

  参加者の一人である母親に、この会について聞きました。
  「アトピー性皮膚炎の症状が強く出ていると、周囲の人に、母親が悪いとか、親が子供をこんな風にしたとか、心無いことをいわれることも少なくありません。わざと人目の少ない夕方を選んで散歩させたりして、どうしても子供と家にこもってしまいがちでした。でもこの集まりに参加することで、思いを共有し合える仲間を得て、本当にほっとできたんです」。 隣でお子さんを抱っこしながら、そうそう、とうなずく母親もいます。
  「私には二人の子供がいますが、親しい友達のなかには同じようにアトピーで悩む人がいなくて、分かり合える仲間がほしいと感じていました。このような場を知ることができ、心強く思っています。」
  アトピーやアレルギーがあると、みんなと同じものが食べられない、楽しいはずのおやつの交換もできないなど、親子の交友関係で注意しなければならない点が多いばかりか、特有のかゆみで子供がぐずれば常につきっきりとなり、落ち着いた時間を過ごすことすら難しい場合があります。同じ経験をしている仲間は、時に家族以上に精神的な支えになる、といってもよいでしょう。
 
  「アトピーの会」のきっかけを作ったのは、ご自身も二人のアレルギー児の母親である、市内在住の飯沢さんです。「子供のアトピーは気をつけなければならない点がそれぞれ違うし、人によっては偏見もあるので、誰に話せば分かってもらえるのかさえ分からない時がある。ちょっとした話題でも、そうだよねと分かってくれる人がいると、それだけで安心できるのは誰でも同じこと。私自身も、仲間を得なければ前向きに過ごしてくることはできませんでした。一人で悩まないで、ぜひ仲間を作ってほしいですね」
  病院などで出会った親子に声をかけ、旭川市内外の薬局やお店に、「ひとりで抱え込まないで。仲間を作りましょう」という趣旨のポスターも張ったという飯沢さん。この地道な行動が大きな輪を作ることとなりました。
 
お母さんたち

地道なポスター貼りで徐々に増えた大切な仲間!
「張り紙をあちこちにしたはよいけど、今は黄色くなってるものも多いだろうなあ」と笑う飯沢さんですが、今日集まったメンバーは「張り紙を見て電話した」という人がほとんど。時には旭川市外に住む人からの問い合わせもあるといいます。 飯沢さんは「定期的に集まる人数が少ないから、この会、自然消滅しちゃうかもしれない」と冗談交じりに言いますが、継続を強く望む声は少なくありません。この日も「ずっと続けましょうよ、協力しますから!」と参加者から力強い声があがっていました。
 
  「はじめの一歩」と、その集まりを利用して会合を続ける「アトピーの会」を取材して、勇気を持ってはじめの一歩を踏み出せば、それがやがてすばらしいコミュニティーを生み出すのだということがわかりました。
おぴったの写真
 ●名称:はじめの一歩
 ●代表:大沢礼子
 ●場所:旭川市障害者福祉センター おぴった
        旭川市宮前通東4155番30
 ●開催日:毎週木曜日
 ●時間:10時〜12時
 ●参加料:無料
 ●電話:0166−65−1184
 ●URL:"https://babywrapasahikawa.wordpress.com"             

 ●アトピーの会 代表:飯沢可奈江             
 ●電話:090−5071−5503
 ●開催日:毎月第3木曜日、はじめの一歩にあわせて開催